M.T.氏作「すべてをみだすモノ」「続すべてをみだすモノ」をプレイ

霊や呪いなどのカルトをテーマにしたノベル調のロングシナリオ。
世界観は何といえばいいか、現代的なアジアの国際関係や民族をモチーフにしています。
3部作のようで、今のところ前編と中編が公開されています。


最初に総合的な感想を述べますと、唯物論者で、ナショナリズムに嫌悪感を催す傾向のあるきちょうじにとってさえも、非常に興味深く楽しめる内容で、良作といえる出来ばえだったと思います。
唯心論者や右派の人ならば、より一層楽しめるのではないでしょうか。(ただしアジアの国々や民族についての素養が少々必要かもしれません)


さて、物語の始まりは、冒険者たちがとあるハポン人(日本人)と関わることによって、生活のすべてが狂っていくというところからはじまります。
そして、この呪いを解決するためにあれこれしていくという筋なのですが、世界観が通常のワース観から大きく乖離しているにもかかわらず、ストーリーの進めかたと台詞回し、テンポが非常に巧みで、序盤からストーリーに引き込まれました。

現代をモチーフにしているものの、冒険者たちの存在には一定の正当性が与えられるよう配慮されており、ゴーゴンといった魅力的な敵など、ファンタジー的な要素が添えられていたところも好感触でした。


素材に関しては、カード絵はASK画が使われていましたが、素材選びに手を抜いた感は決してなく、むしろすべてのカード絵や背景画像には繊細な加工が施され、雰囲気作りに一花添えていました。
また、BGMや効果音も厳選されており、作者の努力が垣間見えたと思います。


問題点としては、戦闘バランスやコンテントの微妙な配置順などに甘さが見られたことなどが挙げられると思いますが、やはり一番の問題はプレイヤーを選んでしまいがちだということでしょうか。
作者も注意を促していますが、ストーリーは嫌韓的な要素が強く、中には嫌悪感を感じる人がいるかもしれません。
作者の信条をシナリオに込めることは大事だとは思いますが、それが露骨で、しかもストーリーと直接関係ない場合が多々あったので、そのあたりでシナリオの完成度が下がってしまった点は少しもったいないよう感じました。


ですが、問題点があるとは言え、全体的な完成度は相当なものです。
このような話題性のある大作の感想が書かれているサイトが僅少なのはすこし悲しいですね。
いまから完結編の公開が待ち望まれます。