キーコードの消極的利用と積極的利用(後編)

今日は先日のつづきとして、呪縛・麻痺・対象消去など、それぞれの効果に対するキーコード禁止の意味と、奨励されるべきイベントの組み方について考えてみます。


暗殺
これに関しては、改めて述べる必要はないかもしれません。
キーコード「暗殺」は、以前は一撃必殺と勘違いされてキーコード禁止の対象となることがありましたが、これは現在ではほぼまったく見られません。
たとえ敵がシーフや忍者であったとしても、「暗殺」を禁止する必要はないでしょう。


中毒
結論から言えば、「中毒」をキーコード禁止する必要はないと思います。
以前はレベル比5などの凶悪な中毒技能が横行していましたが、現在は上手にバランスが図られたカードが広く普及しています。
したがって、もはやキーコード禁止だけでなく、付帯能力などによる緩和策も必要ないのではないでしょうか。


ただし、敵の耐久力を防御力修正で設定しているときは注意が必要です。
中毒ダメージは防御力補正を受けないので、いくら防御力補正が高くても毒ダメージであっさりやられてしまうことがあります。
敵の耐久力を設定するときはこれを頭の片隅に入れておきましょう。


もうひとつ付け足すと、中毒攻撃は肉体属性の場合が多いことを認識しておくべきです。正常な肉体を持たない敵ならば、中毒状態になるということは通常の「毒」ではなく、他の効果のメタファー(出血・凍傷など)の可能性が高いでしょうから、そこを考えて禁止が妥当か考えるべきです。


沈黙
「沈黙」をキーコード禁止しているシナリオはほとんど見ないので、これに言及する必要はないかもしれません。
基本的に禁止・緩和をする必要はないと思いますが、ボスが魔法ばかり使う魔道士のときには、付帯能力で回復させる手もあるとおもいます。


眠り
ボス戦での眠り攻撃の使い方としては、ボスが眠っている間に回復・補助魔法など使う、カード交換を繰り返して攻撃態勢を整える、ボスの溜め込んだスキルカードを破棄させる、などが有効です。
ですが、眠り状態は、ターンの経過はもちろん、一撃攻撃を受ければ回復するので、呪縛ほどの威力はありません。
ですので、キーコードによる禁止が必要ないことはもちろん、付帯能力による回復もよく考えて設定すべきです。


また、眠りは精神属性の場合が多いので、心を持たない敵が眠ることはまずありません。


呪縛
呪縛がキーコード禁止されているシナリオは現在でも見られます。
結論から言うと、キーコード禁止は避け、「怪力無双」などの付帯能力に変えるべきです。
もちろん、一時的な呪縛はまぬかれず、攻撃の不可避、スタン(行動キャンセル)、所持カードの破棄は生じてしまいすので、そこまでを考慮に入れたバランス取りが必要になってきます。
しかし、付帯能力が、敵の特徴を表現する一助になるというメリットも指摘できるでしょう。


逆に、ボス戦で呪縛効果に対する措置をとらないと、戦闘がとてもつまらないものになってしまう可能性があります。
召喚獣カード欄を極力節約するために、呪縛回復・沈黙回復・再生などの効果がひとつにまとめられたものもよく見かけますね。


麻痺・石化
これは現在でも多くのシナリオで禁止されているキーコードです。
敵全員が意識不明または麻痺になると戦闘終了ですので、麻痺攻撃を禁止しないと、ボスが麻痺攻撃一撃で倒されてしまう可能性があります。
しかし、すでにキーコード禁止によらない対策が発見されています


ご存知の方もいらっしゃるでしょうが、以下のとおりです。麻痺によって死亡イベントが発火することを利用します。
1.死亡イベントで、敵を選択状態にする。
2.選択中のメンバに対して意識不明判定。
3.失敗したときは、麻痺しかありえない。
4.選択中のメンバに対して麻痺回復。
(2〜3は無くてもいいがあったほうが良い)


これを用いることによって、プレイヤーのストレス減だけでなく、以下のようなメリットがあります。
・《ダメージ+麻痺》のような技能を完封せず、麻痺だけをのぞいてダメージをくらうようにできる。
・キーコードのついていない麻痺攻撃で、一撃必殺されない。


ただし、イベントの組み方が少しわずらわしいので、初心者はキーコード禁止を用いて問題ないと思います。


一撃必殺
最大値処理攻撃や、敵の行動を完全に封じる技能につけられるキーコードです。
キーコード自体が禁止のために設けられたものですので、キーコード禁止を行ってもよいと思われていますが、本当にそれが最善なのでしょうか。


プレイヤーはもちろん一撃必殺と分かって、そのカードを所持しているわけです。
おそらくそういうカードは、超高レベルカードだったり、高額カードだったり、ペナルティの大きなカードだったり、レアカードだったりするでしょう。
そうやって苦労して入手したカードをここぞというボス戦で使ったら、「フハハハ、そんな技が効くとでも思ったか!」というセリフで無効ですか……
レベル3の《居合斬り》は効くのに、レベル14の《分子分解》は効きませんか……一回しか使えないカードだったのに…
(《分子分解》は架空のカードです)


絶対勝ってはいけない戦闘で「一撃必殺」を禁止するのはもちろん賛成です。
しかし、きちょうじとしてはシナリオ製作者がプレイヤーのプレイスタイルを制限するのには反対です。
いいじゃないですか、一撃で戦闘を終わらせたい戦闘嫌いなプレイヤーがいても…


「一撃必殺」に関しては意見が分かれるところだとは思いますが、このような考え方もあるんだなと参考にしていただければと思う次第です。


対象消去
「対象消去」が「一撃必殺」と異なる点は2つあります。


一つ目は、対象消去はストーリーの矛盾を生んでしまうことです。
対象消去攻撃は敵を消滅させるものですから、対象消去でやられたはずの敵の死体が残っていたり、セリフを吐いたり、逃げていったりすると、ストーリーに齟齬が生じてしまいます。
「一撃必殺」の効果に多様性があるのに対し、「対象消去」は対象が消え去るという明確なイメージがあるわけです。


2つめの点は、対象消去効果はギミック戦闘などでバグの温床たりうることです。
実際、難しい戦闘イベントを組んでいるシナリオには特に「対象消去」の禁止が多いようです。
きちょうじとしては、カードワース自体から対象消去効果をなくしても良いとすら感じます。


以上の2点から、「対象消去」をキーコード禁止をするのはやむを得ないと思います。
対象消去された敵の検出方法などが考え出されたりもしましたが、根本的な緩和策にはなっておらず、定着している様子もありません。
敵が跡形も無く消去されてしまうとストーリーに矛盾が生じてしまう場合と、ギミック戦闘を組んでいる場合は、「対象消去」をキーコード禁止するほうが良いかもしれません。



以上をまとめると、
・キーコード禁止は絶対しない方が良い:暗殺、中毒、沈黙、眠り、呪縛
・キーコード禁止は極力しない方が良い:麻痺、一撃必殺
・キーコード禁止はやむをえない:対象消去
ということになります。


もちろん、これが絶対の基準ではありませんし、戦闘状況や、敵の性質などで、さまざまな場合があると思います。
ですが、みなさんがシナリオを制作するときに、少しでもキーコードの「消極的利用」から離れて「積極的利用」のほうに目を向け、キーコードシステムの魅力がプレイヤーに伝わるようにイベントを組めば、あなたのシナリオはよりよい方向に進むはずです。